ご存知の通り、わが国は世界のなかでも有数の長寿国です。厚生労働省において2019年に発表された2018年の平均寿命では女性87.32歳、男性81.25歳となっています。
しかし内閣府の調査によると、この「平均寿命」と医療や介護に依存せずに自立した生活ができる「健康寿命」では差があることが分かっています。2016年のデータを見てみましょう。
女性 | 男性 | |
平均寿命 | 87.14歳 | 80.98歳 |
健康寿命 | 74.79歳 | 72.14歳 |
このデータを見ると、女性では約12年、男性では約7年程度の開きがあることが分かります。この間に病気となり、介護が必要になることが多くなる現状があるのです。
ここでは高齢者に多い病気の特徴と介護状態になってしまう原因について詳しくお伝えします。
目次
高齢者に多い病気の特徴
高齢者の身体の特徴
高齢になると若い頃と比べて病気にかかりやすくなり、複数の病気や症状を持っていることが多くなります。
老化が進むにつれて免疫力が低下するのと同時に、環境に対して適応する能力が低下し、体温調整がうまくいかなくなったり、血圧が上がったり、脱水症状を起こしやすくなってしまうからです。
もちろん病院での治療によって治ることもありますが、それがきっかけで介護が必要になったり、障害が残ってしまったり、慢性化してしまうこともあります。
老化は今までの生活習慣や環境などが大きく影響を受けますので、個人差が大きくなります。そのため病気になりやすい人や健康で生活する人の差を感じるようになるのです。
高齢者に多い病気の特徴
病気のために病院に通院している人は、年齢が高くなるにつれてその割合が多くなります。厚生労働省の調査によりますと、70歳以上では7割以上の人が何らかの病気などによって通院していることが分かっています。
通院内容を見てみると、男女ともに「高血圧症」によって通院している人が最も多く、男性では「糖尿病」「歯の治療」、女性では「目の病気」「歯の治療」が多くなっています。
特に高血圧の場合には、次の病気を引き起こす原因となってしまいます。
脳血管障害:脳出血・脳梗塞・動脈瘤・くも膜下出血など
心臓病:心筋梗塞・狭心症・冠状動脈硬化・心肥大など
腎臓病:腎臓障害
動脈硬化:血管の老化により脳血管障害・心臓病などの原因に
介護状態になってしまうさまざまな原因
高齢者が介護状態になってしまう原因について挙げてみます。高齢者の身体状況の特徴からなりやすい病気や起こしやすい事故などがあります。これら原因に注意して、いつまでも健康で生活できるように工夫しなければなりません。
脱水
高齢者は脱水症状になりやすい特徴があります。
口やのどが渇いたという感覚が薄れると同時に、体液量が減ってくることなどが原因です。脱水症状は命を落としてしまうリスクが高いだけではなく、脳血管障害や認知症など介護状態を引き起こす原因となってしまいます。
1日に必要な水分摂取量は1日に1500~200mlであるといわれており、こまめに摂ることが大事です。
排尿障害
高齢者は加齢によって膀胱が萎縮し排尿回数が増えて頻尿となったり、膀胱の弾力性の低下によって残尿感が生じたり、尿意を我慢できずに失禁してしまうことが多くなります。
そのような症状から尿路感染を起こしたり、前立腺肥大など尿閉を引き起こすことがあります。
排尿障害を引き起こすと、トイレたびたび行くことが嫌になることから、水分を摂らないようにする高齢者が多くなります。すると結果的に脱水傾向になってしまうことがあります。
転倒や転落
筋力の低下や神経・骨関節の病気などからふらつきやつまずき、ぶつかりが多くなってしまい、結果的に転倒や転落事故を起こしてしまいます。
転倒や転落によって骨折や頭部外傷などによって、介護状態となることが少なくありません。
老年期うつ病
老年期になるとうつ病が多くなります。その原因としては老年期を迎えたことによる不安、内科的な疾患によるもの、薬物性のもの、更年期障害によるものなどさまざまです。
意欲が減退し部屋に引きこもりがちになり、外出の機会が失われてます。筋力の低下や認知症発症などのリスクも高まります。
脳卒中
脳卒中は脳内の血管が閉塞してしまうことによって、脳内の一部が損傷してしまう病気です。受傷した脳の部位によって麻痺の出現、嚥下機能の低下、失語、高次脳機能障害などを伴い介護が必要になることも珍しくありません。
長期的な医療や介護が必要になるために家族が疲弊してしまうこともあります。
認知症
認知症高齢者は現在約500万人、65歳以上の約7人に1人の割合であることが厚生労働省の調べによって明らかになっています。増加傾向にあり、2025年には700万人を超えると推計されています。
認知症は脳卒中などが引き金となって発症する「脳血管型」、脳の一部が萎縮することによって発症する「アルツハイマー型」などがあります。重度になるにつれて介護の必要性が高くなります。
がん
国民の2人に1人が「がん」によって亡くなっています。
高齢者の場合には健診などによってがんが発見されても、手術せずに自然経過をみることも少なくありません。最近では在宅で痛みの緩和ケアをしながら過ごすことが多くなりました。
医療と介護が連携しながら対応に当たる必要があります。
まとめ~高齢者の健康寿命を伸ばすには
「いつまでも介護を受けずに健康に過ごしたい」
でもどのようにすればいいのでしょうか。
健康に暮らすには次の3つがとても重要です。
「生活習慣」
「適度な運動」
「バランスの良い食生活」
さらにもう一点付け加えておきましょう。
「かかりつけ医を持つこと」
上記の3点は誰でも大事なことが理解されていますが、自分自身の身体を理解してくれているかかりつけ医がいるととても安心です。
困ったことは気軽に相談することができますし、必要に応じて病院や福祉などにも繋いでもらえます。
高齢期にはどうしても身体が衰えます。これらのポイントに注意しながら、いつまでも健康で生活できるように工夫してみてください。
※参考:
厚生労働省 平成30年簡易生命表の概況「主な年齢の平均余命」
内閣府 高齢化の状況「健康寿命と平均寿命の推移」
厚生労働省 平成28年 国民生活基礎調査の概況
WAM NET(福祉医療機構)高齢者に多い疾患の基礎知識