親の心身に衰えを感じるようになると、介護施設の入所を考えるようになる方も多いのではないでしょうか。
でも実際に介護施設に入所してもらうとなると、どのタイミングがベストなのか、なかなかその判断は難しく感じるのではないでしょうか。
ベストなタイミングについて正しい答えはありません。
ただ介護施設の選択を間違ってしまうと、最期の人生で有意義に過ごすことができなくなってしまいます。それでは選択した子供にとっても後悔することになってしまうでしょう。
ここでは介護施設の入所をどのように進めていけばいいのかその方法について、また実際にあったエピソードを交えてお伝えしていきます。
目次
介護施設へ適切なタイミングに入所するための3つのステップ
①家族で話し合っておくことが一番大事
②事前準備として介護施設のことを調べておく
③医療や福祉との関係づくりをしておく
介護施設へ適切なタイミングで入所するためには、上記3つのステップで取り組んでいくことが大事であると考えられます。
では順番にご説明していきましょう。
①家族で話し合っておくことが一番大事
人生の終末期をどのように過ごしていくのか、親としっかり話し合いをしているでしょうか。「話し合いをしたことがない」という方も、少なくはないでしょう。
高齢者の親を持つ多くの子供は「親の老後は子供がみるもの」「身体が不自由になれば介護施設への入所を」と、親の老後について何らか意識している方が多いことが分かります。
しかし親の希望について踏み込んで話を聞き出す機会を持つことは、あまりに少ないのが現状なのです。
親には親の人生があります。仮に子供が親の面倒をみるとしても、親の希望をしっかりと聞いておくことが大事です。
特に高齢者になると、急に大きな病気を引き起こすことや、認知症になって自身の意思を伝えることが難しくなるリスクが高まります。
そのためある程度の時期が来たら、今後どのように暮らしたいのか、身体が不自由になったらどうするのか、延命治療が必要になったら、など踏み込んだ話をしておくことが大事です。
そのような判断は、子供だけの判断では決められないことも多いからです。
②事前準備として介護施設のことを調べておく
親の希望を聞き出す中で、「将来は介護施設に入所したい」「介護施設で生活がしたい」という意見があれば、介護施設の情報を掴んでおくことが大事になります。
多くのご家庭をみていると、すぐにでも介護施設が必要な切羽詰まった状態になって、選択肢が少ない中で介護施設を選んでいるケースが少なくありません。
介護施設はいつでもどこにでも入所できる訳ではありません。人気がある施設の場合には、空きが出るのに数年必要になることもあるのです。
また介護施設といっても、そのタイプにはさまざまなものがあります。
介護施設というと、身体の不自由な方がスタッフの介護を受けながら生活をしているイメージがあるかもしれませんが、すべてがそのような施設ではありません。
例えば介護施設から仕事に出勤しているような方もおられます。
サービス付き高齢者向け住宅のような自由度の高い施設の場合、高齢者が安心して暮らせる、見守りなどのサービスが付いているだけの施設も多いのです。
また低所得の方であれば、特別養護老人ホームなど収入に応じた料金設定になっている、公的介護保険施設を選ぶこともできます。
今はインターネットなどで地域にある介護施設の情報を知ることができます。
どの施設でも見学することができ、見学会などを実施している施設もありますから、参加してみることも一つの方法でしょう。
③医療や福祉との関係づくりをしておく
高齢者が在宅で生活し続けていくために、安心の基盤となるものは間違いなく「医療」です。
もし親にかかりつけ医がいないということであれば、近所の内科など信頼できる病院やクリニックを見つけておくことが大事です。
気軽に相談ができる、近くにあって通いやすい、身体のことを安心してお任せすることができる、などといった基準で選ぶといいでしょう。
体調を管理してもらうことはとても大事ですし、また今後の生活などのことについて相談することもできます。介護が必要になった場合には、福祉に繋いでくれることもあります。
すでに介護サービスを受けている場合においては、担当の地域包括支援センターの職員やケアマネジャーと積極的に連携を図ることが大事です。
高齢者福祉のプロですから、どのようなタイミングで介護施設が必要になるのか理解しています。
親との話し合いで将来的な希望があるのであれば、その内容はしっかりと担当のケアマネジャーなどに伝えておくようにしましょう。
その希望に沿った対応をしてくれますし、希望を叶えるための適切な方法などアドバイスを受けることもできるからです。
介護施設の入所で実際にあったエピソード
介護施設に入所することによって、家族の関係がとても良くなったというエピソードをご紹介しましょう。
高齢の女性 山田ハナさん(80歳、仮名)とその娘 祐子さん(50歳、仮名)が同居しており、お母様は日常的に在宅介護サービスを受けていました。ハナさんと祐子さんはとても仲が悪く、いつも喧嘩ばかりの親子でした。
本音はお互いのことを尊重しているのですが、顔をあわせて生活していると、どうしても素直になれずにいたのです。
そんな時にお母様の身体状況が悪くなりました。そこでお母様は担当のケアマネジャーにこのように相談したのです。
「施設に入所したい。これ以上、娘に迷惑をかけたくないから。」
お母様はこの話は娘には言わないでほしいということでしたが、ケアマネジャーはこっそりお母様の気持ちを娘さんに報告したのです。
すると娘さんから、こんな話があったのです。
「わたしは母のことを自宅で介護し続けるつもりでした。母には感謝していますから。でも母が望むなら施設の入所をお願いします。」
その後、お母様は介護施設に入所しました。
介護施設に入所してから娘さんは、頻繁にお母様のもとを訪問するようになりました。
距離感が取れるようになったせいか、お母様と娘さんは今までのように喧嘩することはなく、笑顔で会話できるようになりました。
介護施設の入所によって、とてもいい関係を築けるようになったのです。そして、いいタイミングで介護施設に入所できたと、お母様も娘さんも実感しています。
このケースでは、お母様がケアマネジャーに介護施設の入所について相談したことが良かったのではないかと感じます。
家族間でうまく相談ができないとしても、ケアマネジャーとの関係づくりが出来ていれば、このケースのように良いタイミングで介護施設の入所に結び付けることができるのです。
まとめ~家族やケアマネジャーへの相談から
「介護施設に入所するタイミングはいつなのでしょうか?」
多くの介護者が抱える悩みの一つです。
あえてそのタイミングを知る方法を一つ挙げるとすれば、「在宅生活を続けるのが不安になった時」であると言えます。
これは高齢者本人の意見であることはもちろんのこと、配偶者など介護者の意見であるとも言えます。
高齢者になると心身の衰えが不安になります。その不安にうまく寄り添っていれば、介護施設への入所のタイミングを知ることができます。
また介護者が介護を抱えてしまうことも良いことではありません。
介護者が疲弊しているのであれば、うまく介護施設を活用して距離をおくことも、関係を壊さないためには重要なことになります。
ここでは介護施設へ入所するタイミングの考え方についてもお伝えしました。
ぜひみなさんも今後のことを考えてみて、家族での話し合いやケアマネジャーへの相談を進めてみてはいかがでしょうか。